NRRとは?計算式とGRRとの違い、目安水準

作成日: 2026/08/12 23:08 ・ 更新日: 2026/09/08 00:00

執筆: DocLead 運営

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この記事の結論

NRRとは既存顧客からの売上が前年比でどう増減したかを示す指標で、解約だけを見るGRRと違い増額分も含みます。

SaaS事業の資料や投資家向け説明で「NRR」という指標を目にする機会が増えています。しかし新規売上と既存売上の伸びが混ざって見えるため、正しい計算式や見方を誤解したまま使っているケースも少なくありません。この記事では、NRRの定義・計算式・類似指標GRRとの違い、目安水準と改善方法を整理します。関連するBtoBマーケティング用語はBtoBマーケティング用語集でまとめて確認できます。

NRR(Net Revenue Retention)とは

NRRとは、既存顧客からの売上が一定期間でどれだけ維持・拡大したかを示す指標です。日本語では「売上維持率」や「純収益維持率」と訳されます。

新規顧客の獲得を含めず、今いる顧客だけを対象に測る点が特徴です。解約による減少と、アップセル・クロスセルによる増加の両方を反映するため、既存顧客が事業成長にどれだけ貢献しているかを1つの数値で把握できます。アップセル・クロスセルの違いはアップセルとクロスセルの違いで詳しく解説しています。

NRRが100%を超えていれば、新規顧客をまったく獲得しなくても既存顧客だけで売上が伸びている状態を意味します。逆に100%を下回っていれば、解約や利用縮小の影響が拡大分を上回っており、新規獲得で穴埋めしないと売上が減っていく構造です。

NRRの計算式

NRRは基本的に次の式で算出します。

NRR(%)= (期首MRR + アップセル − ダウンセル − 解約による減少)÷ 期首MRR × 100
  • 期首MRR:計測期間の開始時点で既存顧客から得ていた月次経常収益
  • アップセル:既存顧客のプラン変更・利用量増加による増収分
  • ダウンセル:既存顧客のプラン縮小による減収分
  • 解約による減少:計測期間中に解約した顧客の失った売上

新規顧客の売上は分子・分母どちらにも含めません。ここがNRRを読み解くうえで最も間違いやすいポイントです。新規獲得の勢いがどれだけ良くても、NRRの数値には反映されません。計算の基準となるMRRの意味やARRとの使い分けはARRとMRRの違い|計算式と使い分けを解説で整理しています。

具体例で見る計算

期首MRRが1,000万円の顧客群について、期中にアップセルで150万円増加、ダウンセルで30万円減少、解約で80万円減少したとします。

NRR = (1,000 + 150 − 30 − 80) ÷ 1,000 × 100 = 104%

このケースでは、既存顧客からの売上が期首より4%多い状態を維持できていることになります。

GRRとの違い

NRRとよく似た指標にGRR(Gross Revenue Retention)があります。両者の違いは、アップセルを計算に含めるかどうかです。

項目 NRR GRR
正式名称 Net Revenue Retention Gross Revenue Retention
アップセルの扱い 含める 含めない
上限 100%を超えることがある 100%が上限
何を示すか 既存顧客からの売上の伸び全体 解約・縮小によるリスクの大きさ

GRRの計算式は次のとおりです。

GRR(%)= (期首MRR − ダウンセル − 解約による減少)÷ 期首MRR × 100

GRRはアップセルを含めないため、上限は必ず100%になります。解約とダウンセルだけで事業の守りの強さを見たいときはGRR、拡大も含めた成長の実態を見たいときはNRRを使うと使い分けやすくなります。両方を並べて見ることで、「新規売上に依存せず伸びているのか」「アップセルに頼らないと守れない状態なのか」といった構造が見えてきます。解約そのものの傾向はチャーンレートとはも参考になります。

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NRRの目安水準

一般的な傾向として、SaaS事業ではNRR100%以上が健全性のひとつの目安とされます。100%を上回っていれば、既存顧客の拡大が解約・縮小の影響を上回っている状態です。

さらに、成長性の高いSaaS事業ではNRR110〜120%程度を目指すケースが多いとされます。この水準を継続的に達成できていると、新規獲得のペースが鈍化しても既存顧客だけで売上成長を維持しやすくなります。ただし目安はあくまで経験則であり、顧客単価やビジネスモデル(エンタープライズ向けかSMB向けかなど)によって適正水準は大きく変わります。SMB向けで解約率が高くなりやすい事業ではNRRが100%を下回ることも珍しくなく、その場合は新規獲得とのバランスで事業全体の健全性を見る必要があります。同業種内での目安感はSaaS解約率の平均も合わせて確認すると立体的に把握できます。

NRRは単月では変動が大きく出やすいため、四半期や年次など一定期間で継続的に追い、トレンドとして見ることが重要です。

顧客セグメントによる違い

同じ事業内でも、顧客規模によってNRRの傾向は大きく異なります。エンタープライズ向けの契約は解約のハードルが高く、利用拡大の余地も大きいため、NRRが高めに出やすい傾向があります。一方でSMB(中小企業)向けの契約は解約が起きやすく、単価拡大の余地も限られるため、NRRが100%を下回りやすい傾向があります。

事業全体のNRRだけを見ていると、この規模別の差が埋もれてしまいます。エンタープライズ・SMBといったセグメント単位でNRRを分解して見ることで、どの顧客層に施策リソースを重点配分すべきかが見えやすくなります。投資家向け説明で使われるNRRも、多くの場合はセグメントを問わない全社平均値であるため、自社の顧客構成と照らし合わせて数値を解釈する視点が欠かせません。

NRRを改善する方法

NRRを改善するアプローチは、大きく「アップセル・クロスセルを増やす」「解約・ダウンセルを減らす」の2方向に分けられます。

  1. 既存顧客の利用状況を可視化する:どの機能がどれだけ使われているかを把握できていないと、拡大提案の糸口も解約の予兆もつかめません。利用データに基づいたヘルススコアの設計が土台になります。
  2. アップセル・クロスセルの提案タイミングを設計する:利用量が上限に近づいたタイミングや、新機能リリースのタイミングなど、顧客が拡大を検討しやすい瞬間を捉えて提案します。
  3. 解約の予兆を早期に検知する:ログイン頻度の低下や主要機能の利用停止など、解約につながりやすい兆候を定義し、カスタマーサクセスが先回りして対応できる体制を作ります。
  4. オンボーディングの質を高める:導入初期に価値を実感できないまま利用が続くと、契約更新のタイミングで解約されやすくなります。初期段階での成功体験の設計がその後の維持率に直結します。
  5. 価格・プラン設計を見直す:利用量に応じて自然に上位プランへ移行しやすい料金体系にしておくと、営業活動を介さずにアップセルが発生しやすくなります。

これらの施策はいずれも、顧客とのやり取りやコミュニケーションの記録が土台になります。たとえばDocLeadのようなツールでは、営業資料をフォーム付き公開ページとして発行し、誰がダウンロードしたか(フォーム経由の記録)や資料ごとのPV・CVR(集計値)をダッシュボードで確認できます。既存顧客向けに機能アップデート資料や活用事例を配布する場面でこうした反応データを蓄積しておくと、どの顧客がどの情報に関心を示したかを把握する材料になり、拡大提案やカスタマーサクセスの動き出しのきっかけにつながります。

施策の優先順位のつけ方

上記の施策をすべて同時に進めるのは現実的ではないため、まずは自社のNRRとGRRの差を確認するところから始めるとよいです。GRRが低い(解約・ダウンセルの影響が大きい)場合は、解約予兆の検知とオンボーディング改善を優先します。逆にGRRは高いのにNRRとの差が小さい(アップセルが伸びていない)場合は、拡大提案のタイミング設計や価格・プラン設計の見直しを優先すべきサインです。指標のどこにボトルネックがあるかを特定してから施策を選ぶことで、限られたリソースを効果的に配分できます。

よくある質問

NRRとチャーンレートはどちらを見ればよいですか。

目的が異なるため、両方を併用するのが基本です。チャーンレートは「顧客数」や「売上」がどれだけ失われたかに焦点を当てるのに対し、NRRはアップセルによる増加分も含めた既存顧客全体の売上変動を示します。解約の悪化を早期に察知したいならチャーンレート、事業全体の拡大余地を見たいならNRRが向いています。

NRRが100%を下回っている場合、すぐに問題だと判断すべきですか。

一時的な下振れなのか、継続的な傾向なのかをまず確認します。単月の変動は季節要因や大口顧客の解約など一時的な要因で起きることもあるため、四半期・年次のトレンドで見て、複数期にわたって100%を下回る場合に構造的な課題として対処するのが妥当です。

NRRはどの部署が責任を持つべき指標ですか。

一般的にはカスタマーサクセス部門が主管することが多いですが、アップセル・クロスセルは営業やプロダクト部門の動きにも左右されるため、部門横断で追う指標として位置づける企業が増えています。

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