SaaS解約率の平均は?セグメント別の目安と測り方
作成日: 2026/08/05 09:00 ・ 更新日: 2026/09/08 00:00
執筆: DocLead 運営
この記事の結論
SaaSの解約率の平均は顧客規模と課金形態で大きく違い、他社の数値をそのまま自社の目標には使えません。
「自社の解約率は業界平均と比べて高いのか低いのか」。この問いに答えようとして、検索で出てくる数値をそのまま自社の目標にしてしまうケースは少なくありません。しかし解約率の「平均」は、顧客規模や課金形態によって大きく変わります。本記事では出典を明記しながらベンチマークの目安を整理し、自社の解約率を正しく測って比較する方法を解説します。関連するBtoBマーケティング用語はBtoBマーケティング用語集でまとめて確認できます。なお、チャーンレートの定義や計算式そのものはチャーンレートとは?種類と計算式、下げ方を解説で扱っているため、まず用語から確認したい場合はあわせてご覧ください。
SaaS解約率の平均はどのくらいか
結論から言うと、単一の「業界平均◯%」を鵜呑みにするのは危険です。まずは出典が確認できる範囲での目安を押さえましょう。
サブスクリプション事業の分析を手がけるRecurly社が公開する「Recurly Churn Report」(2025年版)では、B2B SaaS全体の月次平均解約率は3.5%前後、上位層は2%未満というデータが示されています。国内の解説記事では「初期段階のSaaSの解約率は月次5%程度、良好なら3%以下」という表現も広く流通していますが、この数値の一次出典を明記した記事は多くありません。本記事では、出典が確認できる数値には調査元と年を必ず併記し、確認できない場合は「一般に〜と言われる」という幅表現にとどめます。
海外の複数の業界レポート(Vena、ChurnTools等)を横断すると、月次解約率のおおよその傾向として、SMB(中小企業向け)は3〜5%、ミッドマーケットは1.5〜3%、エンタープライズは1〜2%程度に収まることが多いとされています。ただしこれらは調査対象の業界・地域によって幅があるため、あくまで目安として捉えてください。
参考として、複数の海外業界レポートで概ね一致する月次解約率の目安レンジを表にまとめます。
| セグメント | 月次解約率の目安 | 主な要因 |
|---|---|---|
| SMB(中小企業向け) | 3〜5% | 意思決定者が少なく乗り換えコストも低い |
| ミッドマーケット | 1.5〜3% | 導入規模が中程度で解約の意思決定に時間がかかる |
| エンタープライズ | 1〜2% | 契約金額が大きく解約に稟議が必要 |
| B2C SaaS | 5〜8% | 個人契約で心理的・金銭的ハードルが低い |
これらの数値はいずれも複数の海外レポートを横断した際の傾向値であり、単一の一次調査による断定値ではありません。自社の数値と照らし合わせる際は、次章で紹介するセグメントの一致を必ず確認してください。
なぜ「平均」を鵜呑みにできないのか
解約率の平均値は、顧客規模・課金形態・業界という3つの軸で大きくばらつきます。自社のセグメントと異なる平均値と比較すると、実態以上に不安になったり、逆に楽観視してしまったりする恐れがあります。
例えば、SMB向けにフリーミアムで展開するSaaSと、エンタープライズ向けに年間契約で展開するSaaSでは、解約率の水準がそもそも異なります。前者を後者の平均値と比較して「解約率が高すぎる」と判断するのは、比較の前提がずれています。次のセクションでは、どのような軸で解約率の水準が変わるのかを構造的に見ていきます。
セグメント別に見る解約率の目安
自社に近いセグメントの目安を知ることが、意味のある比較の第一歩です。ここでは3つの軸に分けて、差が生まれる理由とあわせて整理します。
SMB・ミッドマーケット・エンタープライズの違い
顧客規模が小さいほど、解約率は高くなりやすい傾向があります。理由は主に3つです。第一に、SMBは意思決定者が少なく、担当者の一存で解約が決まりやすいこと。第二に、乗り換えコスト(スイッチングコスト)が低く、他社サービスへの移行障壁が低いこと。第三に、担当者の異動・退職によって導入経緯が引き継がれず、契約が見直されやすいことです。
先述の業界レポートの傾向では、SMBは月次3〜5%、ミッドマーケットは1.5〜3%、エンタープライズは1〜2%程度とされています。エンタープライズは契約金額が大きく解約の意思決定に稟議が必要なため、解約率が構造的に低くなりやすいと考えられます。
さらに、担当窓口の数もこの差に影響します。SMBは導入担当者が1名だけというケースが珍しくなく、その担当者が異動・退職すると契約自体が引き継がれず解約に至りやすいのが実情です。一方エンタープライズは複数部門・複数担当者が関与するため、1人の離脱が即解約にはつながりにくい構造になっています。自社がどのセグメントを主戦場にしているかによって、目指すべき解約率の水準そのものが変わることを踏まえておきましょう。
月額/年額・フリーミアム有無による違い
課金形態も解約率に影響します。年額契約は月額契約に比べて解約率が低く出やすい傾向がありますが、これは実際の継続意欲が高いというより、解約タイミングが契約更新月に集約されるためです。月次で見ると解約が起きていないように見えても、更新月にまとめて解約が発生している場合があります。
フリーミアム(無料プラン)を提供している場合、無料ユーザーの離脱も解約率の母数に含めるかどうかで数値が大きく変わります。無料プランからの離脱は有料プランの解約とは性質が異なるため、集計時に分けて扱うのが一般的です。
課金形態の違いは「解約が見えるタイミング」の違いでもあります。月額契約は毎月どこかで解約が発生し得るため、解約の兆候をリアルタイムに近い形で把握できます。一方、年額契約は更新月まで解約が表面化しにくく、気づいたときには複数件がまとめて解約するということも起こり得ます。年額契約が中心のSaaSほど、更新月より前の利用状況(ログイン頻度・機能利用率など)から解約予兆を先取りする仕組みが重要になります。
B2BとB2C・業界による違い
B2C SaaSはB2B SaaSに比べて解約率が高めに出る傾向があります。個人契約は法人契約に比べて解約の心理的・金銭的ハードルが低く、クレジットカードの更新失敗など非任意の解約も起きやすいためです。海外の業界レポートでは、B2C SaaSの月次解約率は5〜8%程度という言及も見られます。
業界による差も見逃せません。EdTech(教育テック)やヘルスケア分野では、利用が季節的・一時的になりやすいことから、解約率が7〜10%台とやや高めに出る傾向があるという指摘があります。ただし業界区分の粒度や調査対象によって数値は変動するため、あくまで参考値として扱ってください。
自社の解約率をどう測り、ベンチマークと比較するか
ベンチマークと比較する前に、まず自社の解約率が「何を測った数値なのか」を明確にする必要があります。ここを揃えないと、外部の目安と比較しても意味を持ちません。
母集団と期間を揃える
解約率には、顧客数ベース(何社が解約したか)と売上ベース(解約によって失われた売上の割合)の2種類があります。どちらを使うかによって数値の意味が変わるため、比較対象の記事や調査がどちらを指しているかを確認しましょう。
また、任意解約(顧客の意思による解約)と非任意解約(支払い失敗による強制解約)は分けて集計するのが望ましいとされています。非任意解約は請求プロセスの改善で減らせる一方、任意解約は商品価値の課題を示すため、対策が異なります。期間についても、月次と年次を混同しないよう統一してください。解約率の具体的な計算式や算出手順は解約率の計算方法|月次/年次・Excel算出手順で詳しく解説しています。
母集団の定義でもう一つ見落としやすいのが、契約プラン単位で見るか、組織単位で見るかという点です。同一の顧客が複数プランを契約している場合、一部のプランだけを解約したケースを「解約」に含めるかどうかで数値が変わります。社内で解約率を継続的に追う際は、この定義を一度決めたら期をまたいで変えないことが、時系列比較の前提として重要です。
業界平均と比べるときの注意
自社の解約率を外部のベンチマークと比較する際は、次の4点を確認してから数値を照らし合わせることをおすすめします。
- 比較対象の調査が、自社と近い顧客規模(SMB/ミッドマーケット/エンタープライズ)を対象にしているか
- 課金形態(月額/年額、フリーミアムの有無)が近いか
- 顧客数ベース/売上ベースのどちらの数値かが一致しているか
- 調査の実施年が古すぎないか(市場環境の変化で水準が変わるため)
この4点が揃わないまま数値だけを比較すると、「平均より高いから危険」「平均より低いから安心」といった誤った判断につながりかねません。自社の解約理由を顧客ヒアリングやアンケートで補足することも有効です。解約予兆の早期把握にはNPSとは?計算方法と少数顧客での使い方を解説で紹介しているスコアの活用も参考になります。
解約率が高いセグメントほど重要になる打ち手
SMBやフリーミアム中心のSaaSのように解約率が高くなりやすいセグメントほど、契約前の期待値をすり合わせておくことの重要性が増します。導入前に機能・料金・サポート範囲について誤解が生まれると、契約後のミスマッチによる早期解約につながりやすいためです。
DocLeadは、営業資料やホワイトペーパーのPDFをアップロードするだけで、リード獲得フォーム付きの共有ページを発行できるツールです。資料を通じて導入前の期待値を事前にすり合わせておくことは、契約後のミスマッチによる解約を減らす一助になります。公開・非公開のワンクリック切替や、フォーム経由のダウンロード記録、ページ閲覧数の計測機能も備えており、どの資料がどれだけ見られているかを把握しながら運用できます。
よくある質問
SaaS解約率の業界平均は何%ですか
単一の平均値を断定することはできませんが、複数の海外業界レポートを横断すると、月次解約率はSMBで3〜5%、ミッドマーケットで1.5〜3%、エンタープライズで1〜2%程度に収まることが多いとされています(Recurly Churn Report 2025年版等)。自社に近いセグメントの数値を参考にしてください。
良い解約率の基準はありますか
「月次3%以下なら良好」という表現がよく使われますが、これも顧客規模や課金形態によって基準が変わります。絶対値よりも、自社の過去の推移や近いセグメントのベンチマークとの比較で評価するほうが実務的です。
無料トライアルの解約率も含めるべきですか
無料トライアルからの離脱と、有料契約後の解約は性質が異なるため、別々に集計することをおすすめします。両者を混ぜると、商品価値そのものの課題なのか、トライアル導線の課題なのかが見えにくくなります。
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