キャズムとは?意味と超え方を解説

作成日: 2026/08/05 09:00 ・ 更新日: 2026/09/08 00:00

執筆: DocLead 運営

マーケティング基礎の記事一覧へ

この記事の結論

キャズムとは初期採用者と多数派の間にある深い溝で、超えるには実績と安心材料を求める層向けに訴求を変える必要があります。

キャズムとは

新しい製品やサービスを出したのに、初期の反応は良かったのに急に売れなくなった。そう感じたことはないでしょうか。その背景にあるのが「キャズム」です。

キャズムとは、割れ目や深い溝を意味する英単語です。マーケティングでは、新しい製品・サービスが市場に広がる過程で「初期市場」と「主流市場(メインストリーム市場)」の間に存在する大きな溝を指します。

初期市場は新しいものを積極的に試すユーザー層、主流市場は実績や安心感を重視する多数派のユーザー層です。この2つの層は求めるものが根本的に異なるため、初期市場で支持されても主流市場にそのまま広がるとは限りません。この断絶を乗り越えられずに勢いを失う製品・サービスは少なくありません。

キャズムという概念は、コンサルタントのジェフリー・ムーアが著書『Crossing the Chasm』で提唱したもので、後述するイノベーター理論を土台にしています。もともとはハイテク業界の新製品普及を説明するために生まれた理論ですが、現在では BtoB の SaaS やサービス全般に当てはめて語られることが多くなっています。

なぜ今この理論が注目されるのかというと、多くの企業が「最初の数社には導入してもらえたのに、そこから先が伸びない」という同じ壁にぶつかるためです。原因を「営業力不足」や「製品の質」だけに求めてしまうと、本質的な対策にたどり着けません。キャズムという構造を知っておくことで、次に打つべき手が見えてきます。関連するマーケティング用語はBtoBマーケティング用語集にまとめています。

イノベーター理論との関係

キャズム理論を理解するには、土台となっているイノベーター理論を押さえておく必要があります。ここでは要点を簡潔に整理します。

5つの採用者タイプ

イノベーター理論は、市場に普及するまでのユーザーを採用の早さで5タイプに分類する考え方です。エベレット・ロジャーズが提唱しました。

タイプ 市場に占める割合の目安 特徴
イノベーター 2.5% 新しさ自体に価値を感じ、最も早く試す層
アーリーアダプター 13.5% 課題解決への感度が高く、自ら情報を集めて判断する層
アーリーマジョリティ 34% 実利を重視し、他社の実績を見てから動く層
レイトマジョリティ 34% 多数派が使っていることを確認してから追随する層
ラガード 16% 変化に慎重で、最後まで様子を見る層

キャズム理論では、イノベーターとアーリーアダプターまでを「初期市場」、アーリーマジョリティ以降を「主流市場」と位置づけます。キャズムはこの2つの市場の間、つまりアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に存在します。

割合の数値はあくまで目安であり、業界や商材によって実際の分布は変わります。重要なのは正確な割合ではなく、「初期市場と主流市場では価値観が大きく異なる層が存在する」という構造そのものを理解することです。

なぜアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に溝が生まれるのか

原因は購買動機の違いです。アーリーアダプターは「他に先駆けて課題を解決したい」という動機で動くため、多少不完全な製品でも将来性を見て採用します。

一方でアーリーマジョリティは「周囲も使っていて実績がある」という安心感を重視します。先進性そのものにはあまり関心がなく、失敗したくないという心理が強く働きます。この価値観のギャップが、キャズムという深い溝として現れるのです。

さらに、アーリーマジョリティは自分で情報を探すよりも、同業他社や信頼できる第三者の評価を参考にする傾向があります。営業担当者がどれだけ製品の優位性を語っても、それだけでは動かず、「うちと同じ業界の会社が実際に使ってどうだったか」という具体的な情報を求めるのです。この特性を理解しないまま初期市場と同じ売り方を続けると、いつまでたっても溝を越えられません。

キャズムを超えられないとどうなるか

初期市場だけで売上が伸び悩み、そこから成長が止まってしまうのが典型的なパターンです。アーリーアダプターへの提案は評価されたのに、その先の商談で「他社の導入実績はありますか」という質問に十分答えられず、失注が続くケースがよく見られます。

この状態を放置すると、限られたアーリーアダプター層を刈り尽くした時点で新規獲得が止まり、事業の成長カーブが頭打ちになります。キャズムは自然に消えるものではなく、意図的に超えるための施策が必要です。新規獲得が伸び悩む局面では、既存顧客の離脱を示すチャーンレートも併せて確認しておくと、事業全体の停滞要因を見極めやすくなります。

さらに厄介なのは、初期市場で得た成功体験がそのまま通用しないという点です。「アーリーアダプターには刺さった訴求メッセージや営業トークを、そのままアーリーマジョリティにも使ってしまう」ことが、キャズムに落ち込む典型的な原因の一つです。相手が重視するものが変わっている以上、アプローチも変える必要があります。

キャズムを超えるための実務ポイント

ここからは、実際にキャズムを超えるために何をすべきかを見ていきます。理論の理解だけでなく、日々の営業・マーケティング活動に落とし込むことが重要です。

アーリーマジョリティが求めているのは「安心感」

結論から言うと、アーリーマジョリティを動かす最大の要素は「実績」です。アーリーマジョリティは「自社と似た会社が導入して成果を出しているか」を判断材料にします。

そのため、営業やマーケティングの現場では、機能や独自性を訴求するだけでなく、導入企業の声や成果を具体的に示すことが欠かせません。商談の初期段階から実績資料を提示できるかどうかが、検討の土俵に乗れるかどうかを左右します。

逆にいえば、機能面での差別化に力を入れているのに成約率が伸び悩んでいる場合、原因は製品そのものではなく「実績の見せ方」にあるかもしれません。アーリーマジョリティ向けの商談では、製品説明の前に実績資料を渡すくらいの順番の入れ替えが有効なこともあります。

実績・事例資料を素早く整備し展開する

アーリーマジョリティ攻略の鍵は、実績を「資料としてまとめ、必要なタイミングで届けられる状態」にしておくことです。事例資料の作り方は導入事例の作り方・構成で詳しく解説していますが、ポイントは課題・施策・成果を具体的な数字とともに簡潔にまとめることです。

このとき陥りやすいのが、「事例が少ないうちは公開できない」と考えて資料化を先延ばしにしてしまうことです。しかし、アーリーマジョリティは完璧な実績集ではなく、自社と似た状況の会社が実際に成果を出したという1件の具体例だけでも判断材料にします。まずは目の前にある小さな成功を、丁寧に資料化することから始めるのが現実的です。

もう一つ重要なのが、その資料を見込み客にどう届けるかという導線です。事例が1件でも、それを求める見込み客のタイミングで提示できなければ機会損失になります。せっかく良い事例ができても、資料作成から公開までに時間がかかりすぎると、商談のタイミングを逃してしまいます。

DocLead は、PDF をアップロードするだけでリード獲得フォーム付きの共有ページを発行できるツールです。事例資料が完成したらすぐに公開/非公開をワンクリックで切り替えられるため、営業担当者が「できたてのホヤホヤの事例」をその場で商談相手に送るような使い方ができます。フォーム経由のダウンロード記録とページの PV も自動で記録されるため、どの事例資料がアーリーマジョリティ層の関心を引いているかも把握できます。

例えば、最初は1社分の事例資料だけを公開し、反応が良ければ関連する切り口の事例を追加していく、といった段階的な運用も可能です。実績が積み上がっていく過程そのものを、共有ページの更新という形で見せていけるのも、ファイルベースで手軽に運用できるからこその使い方です。

BtoB マーケ主要指標ベンチマーク集 の表紙

全 16 ページ!自社の数字を業界水準と比べられる

BtoB マーケ主要指標ベンチマーク集

  • 主要指標の平均値
  • チャネル別の目安
  • 指標の測り方
無料でダウンロード

ニッチ市場に絞って橋頭堡を築く(ボーリングレーン戦略)

もう一つの有効な考え方が、ジェフリー・ムーアが提唱した「ボーリングレーン戦略」です。主流市場をいきなり全方位で狙うのではなく、特定の業界・特定の課題を持つセグメントに絞って実績を積み上げます。

1本のピンを倒すと隣のピンも連鎖して倒れるように、狭い市場で圧倒的な実績を作れば、隣接するセグメントへの展開が容易になります。実績資料も、この狙ったセグメント向けに作り込むことで説得力が増します。

例えば「製造業の中でも金属加工業向け」のように業種を絞った実績資料を用意すると、同業種の見込み客は「まさに自社の話だ」と感じやすくなります。幅広い業種向けの汎用的な事例資料よりも、狭く深く刺さる資料の方がアーリーマジョリティには効果的です。ターゲットを絞り込むことに不安を感じるかもしれませんが、最初のセグメントで確実な実績を作ることが、結果的に広い市場への近道になります。

キャズムを超えた事例に学ぶ視点

他社がキャズムをどう超えたかを学ぶ際は、単に成果の数字だけでなく「どの層に、どんな実績をどう見せたか」に注目すると実務に活かしやすくなります。

SaaS 企業の事例整理の視点はSaaS 導入事例でも紹介しています。事例の見せ方や訴求軸を型として持っておくと、自社の実績資料を作る際の再現性が高まります。

また、アーリーアダプター層への向き合い方自体を見直すことも有効です。アーリーアダプターの特徴と口説き方で触れているように、初期市場でどんな顧客に支持されたかによって、次に狙うべきアーリーマジョリティのセグメントも見えてきます。初期市場と主流市場は別々に考えるのではなく、一連の流れとして捉えることが、キャズムを超える近道です。

よくある質問

キャズムとデスバレー(死の谷)は何が違いますか。

デスバレーは研究開発から事業化までの資金調達の壁を指す言葉で、主に技術シーズの実用化フェーズで使われます。キャズムは製品が市場に出た後、初期市場から主流市場に広がる際の顧客心理の壁を指します。フェーズも対象読者も異なる概念です。混同されやすい用語ですが、デスバレーは「事業化できるかどうか」、キャズムは「広がるかどうか」の壁だと整理すると分かりやすいでしょう。

BtoB でもキャズムは起きますか。

はい。BtoB でも起こります。むしろ意思決定に複数人が関わる BtoB では、稟議を通すための「実績」の重要性が高く、キャズムの影響がより強く出やすいと言われます。担当者個人が納得しても、上長や決裁者を説得する材料として実績資料が求められる場面が多いためです。

キャズムを超えるまでにどのくらいの期間がかかりますか。

業界や製品の性質によって幅があり、一律の目安を示すことはできません。重要なのは期間そのものより、実績の蓄積と展開を止めずに継続することです。ニッチ市場への絞り込みと実績の可視化を並行して進めている企業ほど、結果的に短い期間で主流市場への展開に成功する傾向があります。

中小企業やスタートアップでも意識すべきですか。

意識すべきです。リソースが限られているからこそ、狙うセグメントを絞り込み、少ない実績を最大限に活用する工夫が成果につながります。大企業のように広告予算をかけて認知を広げるのが難しい分、実績資料を通じた地道な信頼構築が相対的に効果を発揮しやすいとも言えます。

キャズムを乗り越えたことは何で判断できますか。

明確な基準はありませんが、目安になるのは「紹介やリファレンス経由の商談が増える」「導入企業側からの問い合わせが増える」といった変化です。実績資料への反応(ダウンロード数や閲覧数)が安定して積み上がってくることも、一つのサインとして捉えられます。

キャズムを超えるために最初にやるべきことは何ですか。

まずは既存顧客の中から成果が出ている事例を1件でも掘り起こし、資料として形にすることから始めるのが現実的です。完璧な事例を待つより、小さな実績を素早く展開する方がアーリーマジョリティへの訴求につながります。資料ができたら、狙ったセグメントの見込み客に確実に届く導線とあわせて整えておくことが重要です。

手元の PDF が、30秒後にはリード獲得フォームに。

  • PDF をアップロードするだけで、フォーム付きの公開ページが完成
  • ダウンロードした人の連絡先が、リードとして自動で貯まる
  • 無料プランのまま公開もリード獲得も試せる
無料で始める

クレジットカードの登録は不要です。

サービス紹介資料 の表紙

実物の公開ページで、フォームの体験もできる

DocLead サービス紹介資料

  • アップロードから公開までの3ステップ
  • リード一覧・CSV・ダッシュボードの実画面
  • 料金プランとよくある質問
資料をダウンロード