SaaS導入事例の作り方|依頼タイミングと使い回し方

作成日: 2026/07/18 09:00 ・ 更新日: 2026/09/08 00:00

執筆: DocLead 運営

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この記事の結論

SaaSの導入事例は、契約後も使われ続けている事実を示すことで、解約可能なサービスならではの強い説得力を持ちます。

SaaS は月額・年額の契約で使い続けてもらう前提のサービスです。裏を返せば、契約後もいつでも解約できるサービスだといえます。この記事では、こうした SaaS ならではの事情を踏まえた導入事例の依頼タイミングと、事例を営業・マーケの両方で使い回す設計を解説します。導入事例そのものの作り方(取材から公開までの手順)は導入事例の作り方|取材から公開までの7ステップで詳しく解説しているので、あわせて参照してください。事例を含む営業資料全体の作り方は営業資料作成 完全ガイド|種類から効率化まででも整理しています。

SaaS導入事例が重要な理由:解約できるサービスだからこその証明力

買い切り型の製品であれば、購入した時点で取引は一区切りします。一方 SaaS は、契約後も顧客が使い続けるかどうかを日々選び続けている状態です。

この違いが、SaaS における導入事例の意味を特別なものにしています。「導入した」という事実だけでなく、「導入後も使われ続けている」ことを示せる事例は、いつでも解約できるサービスであるからこそ強い説得力を持ちます。

比較検討中の見込み客にとって、他社が長期間使い続けている事実は、機能一覧や料金プランよりも安心材料になります。解約リスクへの不安を打ち消す材料として、事例は営業・マーケ双方で活用価値の高いコンテンツです。

特に検討期間が長くなりやすい SaaS では、機能デモや資料だけでは決め手に欠けることがあります。「同じ課題を抱えていた会社が、導入後もどう使い続けているか」という具体的なイメージは、機能説明では伝えきれない安心感を与えます。

導入事例の作り方を解説する記事は多くありますが、SaaS ならではの依頼タイミングや活用設計まで踏み込んだ情報は限られています。本記事では、事例の型の整理から始め、依頼タイミング、公開後の活用方法までを具体的に解説します。

買い切り型のソフトウェアや業務システムであれば、導入時点で成果を語れば十分な場合もあります。しかし SaaS の場合、導入直後の期待だけでなく、その後も使われ続けているかどうかまで含めて語れる事例が、他社との差別化材料になります。

事前準備:事例の型を選び、依頼先を絞り込む

事例を依頼する前に、どんな型の事例を作るかを決めておくと、ヒアリングの方向性がぶれません。SaaS の事例は大きく3つの型に整理できます。型を決めずに取材へ進むと、聞くべき質問が定まらず、後から「数値が欲しかったのに聞けていなかった」といった手戻りが起きがちです。

課題解決型は、導入前の業務課題と、SaaS を使ってどう解決したかを中心に描く型です。定量的な成果よりも、業務プロセスがどう変わったかというストーリーに重点を置きます。特定の機能の使い方を伝えたい場合に向いています。

数値成果型は、導入前後の指標(作業時間・コスト・売上等)の変化を明示する型です。具体的な数字は説得力が高い一方、顧客側が数値を公開できるかどうかの確認が欠かせません。特に上場企業や情報管理が厳格な業種では、社外に出せる数値の範囲が限られていることも多く、事前の擦り合わせが不可欠です。

活用定着型は、長期間にわたって使われ続けている実績そのものを伝える型です。数値の劇的な改善がなくても、契約更新を重ねている事実や、社内での活用範囲が広がった経緯を伝えることで、継続利用の証明として機能します。

3つの型は、それぞれ訴求できる相手が異なります。課題解決型は自社と近い課題を抱える検討初期の見込み客に、数値成果型は投資対効果を厳密に見極めたい決裁者に、活用定着型は解約リスクを懸念する慎重な検討者に、それぞれ響きやすい傾向があります。1つの事例に無理に全てを詰め込むより、型ごとに複数の事例を用意し、相手に応じて使い分ける方が効果的です。

依頼先を選ぶ際は、利用継続期間が長く、サポート担当者との関係が良好な顧客から検討するのが基本です。エンゲージメントの高い顧客ほど、依頼への協力を得やすく、内容も充実しやすい傾向があります。

型と依頼先の組み合わせも意識するとよいでしょう。導入初期から機能を使いこなしている顧客には課題解決型、部署全体への展開が進んだ顧客には活用定着型というように、顧客の状況に合った型を選ぶことで、無理なく充実した内容の事例に仕上げられます。逆に、まだ利用が定着していない顧客に成果を尋ねても、期待するような内容は得にくいものです。

手順:依頼タイミングから公開・活用まで

事例の型と依頼先の方針が決まったら、具体的な進め方に移ります。SaaS ならではのポイントは、依頼するタイミングの見極めです。取材や執筆そのものの進め方は導入事例の作り方|取材から公開までの7ステップを参照しつつ、ここでは SaaS 特有のタイミング設計に絞って解説します。

Step1:依頼タイミングを見極める

事例の依頼タイミングとして特に有効なのが、オンボーディング完了後と契約更新時の2つです。

オンボーディング完了後は、顧客が実際に機能を使い始め、初期の成果を実感し始めるタイミングです。導入直後よりも具体的なエピソードが集まりやすく、課題解決型の事例に適しています。オンボーディングの完了時期は SaaS によって異なりますが、初期設定や基本機能の利用が一通り定着した段階を目安にするとよいでしょう。

契約更新時は、顧客が継続利用を選んだタイミングです。「なぜ更新したのか」を聞くことで、活用定着型の事例に必要な情報を得やすくなります。更新のタイミングで依頼すれば、顧客側も協力への心理的ハードルが下がりやすい傾向があります。

更新時の依頼には、もう1つの利点があります。契約を継続すると決めた直後は、顧客自身がサービスへの評価を前向きに整理しているタイミングでもあります。この心理状態のうちに依頼することで、単なる形式的な回答ではなく、実感のこもったエピソードを引き出しやすくなります。

逆に、契約直後や無料トライアル中の依頼は避けるべきです。まだ十分な成果が出ていない段階での取材は、内容が薄くなりがちです。焦って早期に依頼するよりも、成果を実感できるタイミングまで待つ方が、結果的に説得力のある事例に仕上がります。

依頼のタイミングは、カスタマーサクセス部門との連携で見極めやすくなります。利用率やログイン頻度といった活用状況を日常的に把握している部門と情報共有できる体制を作っておくと、事例に適したタイミングの顧客を見つけやすくなります。定例のミーティングで事例候補をリストアップする時間を設けておくと、依頼先の枯渇を防げます。

Step2:ヒアリング項目を型に合わせて設計する

型によって聞くべき項目は異なります。課題解決型では導入前の業務プロセスと変化点を、数値成果型では具体的な指標の推移を、活用定着型では利用範囲の広がりや更新の決め手を中心に聞きます。項目を型ごとにテンプレート化しておけば、担当者が変わっても一定の品質でヒアリングを進められます。

ヒアリングの前に、社内の営業・カスタマーサクセス担当に事前情報を確認しておくと、取材時間を短縮できます。担当者は顧客の利用状況を把握しているため、どの型の事例に向いているかを事前に判断する材料になります。

質問項目は、事前に顧客へ共有しておくのがおすすめです。当日いきなり質問されるよりも、あらかじめ準備した状態で臨んでもらう方が、具体的なエピソードや数字を引き出しやすくなります。取材時間の目安(30分〜1時間程度)もあわせて伝えておくと、顧客側もスケジュールを調整しやすくなります。

Step3:資料として公開し、ダウンロード可能にする

完成した事例は、Web ページとして公開するだけでなく、資料としてダウンロードできる形にしておくと活用の幅が広がります。PDF をアップロードするだけでリード獲得フォーム付きの共有ページを発行できるツールを使えば、事例記事をそのまま資料化して公開できます。

Web ページのままだと、営業担当が商談で提示する際にリンクを開いてもらう必要があり、その場でじっくり読んでもらいにくいという難点があります。PDF 資料としてダウンロードできる形にしておけば、商談前にメールで送付したり、オフラインの商談で印刷して渡したりと、活用のシーンを広げられます。

事例1件だけを単独で公開するよりも、既存の事例と並べて一覧できるようにしておくと、見込み客が複数の事例を見比べながら検討を進められます。件数が少ないうちは1件ずつでも構いませんが、公開の都度、過去の事例との関連づけを意識しておくと後から整理しやすくなります。

ダウンロード用のフォームを用意すれば、フォーム経由のダウンロードを記録でき、どの事例に関心が集まっているかを把握できます。比較検討段階の見込み客が事例をダウンロードしていれば、営業担当がフォローする際の材料になります。フォームの項目設計に迷う場合は資料ダウンロードページの作り方、リード獲得の考え方全般はリードマグネットとはで詳しく解説しています。

Step4:公開後の反応を見て次の依頼先を検討する

公開後は、ページの PV を集計値で確認し、どの業種・課題の事例に関心が集まっているかを把握します。反応の良かった型やテーマに近い顧客を、次の依頼先の候補として検討すると、効率よく事例を積み上げられます。PV・DL・商談化まで含めた効果の測り方は導入事例の効果とは|5つの効果と測り方(PV・DL・商談化)で解説しています。

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つまずきポイント:断られる・成果が数値化しにくいケース

事例の依頼を進めていると、いくつかのつまずきに直面します。代表的なのが、顧客に依頼を断られるケースと、成果が数値化しにくいケースです。

顧客に断られる理由の多くは、社内稟議の手間や、競合に手の内を知られたくないという懸念です。社名を伏せた匿名掲載や、公開前の内容確認を約束するなど、ハードルを下げる提案をあらかじめ用意しておくと、依頼が通りやすくなります。

依頼する部署の担当者が窓口になってくれるとは限らない点にも注意が必要です。実際に利用している現場の担当者は協力的でも、広報・法務部門の承認が必要な企業では、社内調整に時間がかかることがあります。依頼のタイミングを早めに設定し、余裕を持ったスケジュールで進めることをおすすめします。

謝礼や特典を用意することも、依頼を受けてもらいやすくする一つの方法です。金銭的な謝礼でなくても、限定機能の先行提供や、他ユーザーとの交流機会の提供など、SaaS ならではの特典を用意できないか検討してみるとよいでしょう。

成果が数値化しにくい業務もあります。定性的な効果しか語れない場合は、無理に数値成果型を目指さず、活用定着型に切り替えるのが現実的です。「使い続けている」という事実自体が、SaaS にとっては十分な説得材料になります。

数値を出せそうに見えても、算出根拠があいまいなまま公開するのはリスクがあります。出典なき数値の断定は、後から誤りが発覚した場合に信頼を損ないます。顧客側が自信を持って提示できる数字だけを掲載し、あいまいな場合は「体感として」「担当者の実感として」といった表現にとどめる判断も必要です。

取材を進める中で、当初想定していた型と実際の内容が合わないこともあります。その場合は型に固執せず、顧客が語りやすいストーリーに合わせて柔軟に構成を調整することをおすすめします。無理に予定していた型に当てはめようとすると、不自然な内容になり、かえって説得力を損ないます。

複数の部署で導入されている SaaS の場合、部署によって利用状況にばらつきがあることも珍しくありません。ある部署では定着している一方、別の部署ではあまり活用されていないというケースでは、無理に全社的な成果として語らず、活用が進んでいる部署にフォーカスした事例にする方が説得力を持たせやすくなります。

こうした部署間のばらつきは、むしろ「どうやって活用度の低い部署にも定着させたか」という別テーマの事例につながることもあります。うまくいかなかった経緯も含めて正直に描くことで、同じ課題を持つ見込み客にとって参考になる内容になります。

効率化のヒント:1つの事例を営業とマーケで使い回す

事例は一度作って終わりにするのではなく、複数のシーンで使い回すことで投資対効果を高められます。SaaS の商談は検討期間が長くなりやすく、同じ事例でも接触するタイミングによって役割が変わります。

商談添付資料としては、比較検討段階にある見込み客に、類似業種・類似課題の事例を個別に送付する使い方が有効です。営業担当が商談の文脈に合わせて事例を選び分けられるよう、業種や課題別にタグ付けして整理しておくとよいでしょう。

商談の終盤で解約への懸念を示された際にも、活用定着型の事例が力を発揮します。「導入後2年、3年と使い続けている企業がある」という事実を示すことで、機能面の説明だけでは払拭しきれない不安に応えられます。

Web サイトの事例ページ・ダウンロード資料としては、検索エンジンやSNS経由で流入した見込み客が、営業担当と接触する前に事例を確認できるようにします。比較検討層に向けた入口として機能します。

比較検討層への配布という観点では、業種別・課題別に事例を整理しておくことが重要です。自社と近い業種や規模の事例を見つけやすくしておくと、見込み客は自分ごととして事例を読み進めやすくなります。事例が数件しかない段階では無理に分類する必要はありませんが、件数が増えてきたら業種タグや課題タグを付けて整理すると、活用の幅が広がります。導入検討中の企業が「自社と似た会社の事例」にたどり着きやすくなることで、資料単体の説得力を底上げできます。

事例の内容を更新したい場合は、公開・非公開をワンクリックで切り替えられる仕組みが役立ちます。古くなった事例をいったん非公開にし、更新後の内容で新しいページを公開するといった運用ができます。料金プランの変更などで内容が古くなった事例を、そのまま放置してしまうことを防げます。

複数の事例を蓄積していくと、業種別・課題別に整理された事例集そのものが集客資産になります。事例集としてまとめて資料化すれば、検討初期の見込み客が自社に近い事例を一度に見比べられるようになり、比較検討の材料としての価値がさらに高まります。

事例を作るたびにマーケティング担当だけで抱え込む必要はありません。取材候補の選定はカスタマーサクセス、公開後の営業活用は営業チームというように、部門をまたいで役割を分担すると、無理なく継続的に事例を積み上げられます。

役割分担を明確にしておくと、事例作成が特定の担当者の負荷に偏ることを防げます。四半期に1件など無理のないペースを決め、関係部門で共有しておくと、継続的な取り組みとして定着しやすくなります。まずは1件、直近で継続利用が確認できた顧客に依頼するところから始めてみましょう。

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