ARRとMRRの違い|計算式と使い分けを解説

作成日: 2026/08/12 23:23 ・ 更新日: 2026/09/08 00:00

執筆: DocLead 運営

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この記事の結論

ARRとMRRの違いは見る時間軸で、ARRは年間の経常収益、MRRは月次の経常収益を示し用途が分かれます。

SaaSの経営指標を調べていると、ARRとMRRという似た略語が並んで出てきます。どちらも「継続的な収益」を表す指標ですが、見る時間軸と使う場面が違います。この記事では、ARRとMRRの定義・計算式・使い分け、関連指標との関係を整理します。

ARR・MRRとは何か

ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)は1年単位、MRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)は1ヶ月単位で、継続課金から得られる収益を示す指標です。両方とも、単発の売上ではなく「今後も継続して入ってくる見込みの収益」を測る点が共通しています。

サブスクリプション型のSaaSビジネスでは、売上が毎月コツコツ積み上がっていく特性があります。単月の売上高だけを見ていると、季節要因や大型契約の有無で数字が上下し、事業の実態がつかみにくくなります。ARR・MRRはこの「継続性」の部分だけを切り出して可視化する指標です。

両者は計算式で相互に変換できるため、対立する指標ではなく、同じ実態を異なる時間軸で見ているだけと理解すると整理しやすくなります。関連する基本用語をまとめて確認したい場合はBtoBマーケティング用語集も参考になります。

ARR・MRRの計算式

基本の計算式は次のとおりです。

指標 計算式
MRR 当月の継続課金契約の月額料金の合計
ARR MRR × 12

たとえば、月額5万円のプランを契約する顧客が20社いる場合、MRRは100万円、ARRは1,200万円になります(あくまで説明のための例示です)。

プランが月額・年額混在している場合は、年額契約を月割りに換算してからMRRに合算します。年額60万円の契約であれば月割りは5万円として扱う、という要領です。逆にARRから出発する場合は、年額契約の合計に月額契約×12を加算します。

ここでの計算式はMRR・ARRの定義上一般に用いられているものですが、初回契約時の初期費用や、一時的なオプション課金は含めないのが基本です。継続性のない収益を混ぜると、指標の意味が「今後の見込み収益」からずれてしまうためです。

トライアル中の顧客や、無料プランの利用者もMRRには含めません。あくまで「課金が確定し、継続が見込まれる契約」だけを対象にする点が、単なる売上集計との違いです。無料から有料への転換率を別途追いたい場合は、MRRとは別の指標として管理する企業が一般的です。

MRRの内訳を分解して見る

MRRは合計額だけでなく、増減の内訳を分解して見ることで初めて経営判断に使える情報になります。

  • New MRR:新規契約による増加分
  • Expansion MRR:既存顧客のアップグレード・追加購入による増加分
  • Contraction MRR:ダウングレードによる減少分
  • Churn MRR:解約による減少分

これらを足し合わせると当月のMRR増減が説明できます。合計額の推移だけを追っていると「なぜ増えたか・減ったか」が分からず、New MRRの獲得に問題があるのか、既存顧客の維持に問題があるのかを切り分けられません。解約による減少分の詳しい考え方はチャーンレートの記事で解説しています。

たとえば、当月にNew MRRが50万円増えていても、同時にChurn MRRが40万円減っていれば、純増はわずか10万円です。合計額だけを見て「順調に成長している」と判断すると、解約が静かに事業の足を引っ張っている状態を見逃してしまいます。内訳を分解する運用は、手間がかかる分だけ問題の早期発見につながります。

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ARRとMRR、どちらをKPIにすべきか

結論として、日々の営業・マーケティング活動の進捗管理にはMRR、経営計画や投資家報告にはARRを使うのが基本的な使い分けです。目的が違えば適切な時間軸も変わるため、どちらか一方に絞る必要はありません。

MRRは月次で変化するため、施策の効果測定や月次会議での進捗確認に向いています。新規獲得キャンペーンの成果や、解約対策の効果は、MRRの月次推移で早く検知できます。

一方でARRは、年間の事業計画・予算策定・資金調達の場面で使われることが多い指標です。投資家やボードメンバーへの報告では、年間ベースの数字の方が事業規模を直感的に把握しやすいという実務上の理由もあります。

ただし、ARRは「単純にMRR×12」で機械的に算出される数値である点には注意が必要です。急成長中や解約が増えているタイミングでは、直近1ヶ月の状況を12倍しただけの数字が実態と乖離しやすくなります。四半期ごとの平均MRRから算出する、季節要因を調整するなど、自社の事業特性に応じた補正を検討する企業もあります。

また、事業のフェーズによっても重視すべき指標は変わります。立ち上げ期でMRRが数十万円規模のうちは、月次の増減そのものが重要な意思決定材料になるため、MRRの内訳分解を毎月確認する運用が適しています。事業が安定期に入り、月々の変動が小さくなってきたら、ARRベースで年間計画に対する進捗を追う比重を高めていく、という移行の仕方も実務ではよく見られます。

関連指標との関係

ARR・MRRは単独で見るよりも、他の指標と組み合わせることで事業の健全性がより正確に見えてきます。

  • LTV(顧客生涯価値):MRRに基づく顧客単価と継続期間から算出され、1顧客あたりの累計収益を示します。ARR・MRRが「今の収益規模」を示すのに対し、LTVは「1顧客がもたらす将来価値」を示す指標です。詳しい計算方法はLTVガイドを参照してください。
  • CAC(顧客獲得コスト):新規顧客の獲得にかかったコストです。LTVとCACの比率(LTV/CAC)は、獲得した顧客がコストに見合う収益を生んでいるかを判断する代表的な指標として知られています。計算方法はCACガイドで解説しています。
  • チャーンレート(解約率):MRRの減少要因を直接左右する指標です。チャーンレートが高いと、New MRRをいくら積み上げてもARR・MRRの純増が伸び悩みます。

これらの指標は独立して見るのではなく、「MRRが増えているか」「その増加はLTV/CACに見合った健全な獲得か」「チャーンで漏れが大きくないか」という一連の流れで確認することで、事業の伸びしろと課題が見えてきます。

ARR・MRRを実務で追跡する際の考え方

指標を計算式として理解していても、実務では毎月の集計と可視化を継続する仕組みが必要になります。契約数が増えるほど、Excelでの手集計はミスや属人化のリスクが高まります。

SaaS企業がマーケティング施策を通じてリードを獲得し、契約につなげていく流れ全体の設計はSaaSマーケティングの記事でも触れています。ホワイトペーパーや資料ダウンロードを起点にした見込み顧客の獲得は、New MRRの母数を増やす施策の一つです。DocLeadのようなツールを使えば、営業資料やホワイトペーパーのPDFをアップロードするだけでリード獲得フォーム付きの共有ページを発行でき、フォーム経由でのダウンロード記録や公開ページのPV・CVR計測が可能です。獲得したリードの動向を追いながら、New MRRにつながる施策の効果を検証する材料として活用できます。

ARR・MRRの数字そのものは経理・SaaS管理ツール側で自動集計する仕組みを整え、マーケティング側はNew MRRの源泉となるリード獲得の施策改善に集中する、という役割分担が実務では機能しやすい形です。

よくある質問

年額契約のみのSaaSでもMRRを使う意味はありますか。

年額契約が中心でも、月割りしたMRRを追うことで月次の増減トレンドが把握しやすくなります。ARRだけを年1回確認する運用では、解約や成約の傾向変化に気づくのが遅れがちです。

ARRとMRRのどちらか一方だけ計測していれば十分ですか。

計算式上はどちらか一方から他方を算出できるため、両方を別々に計測する必要はありません。ただし報告する相手や場面によって適切な時間軸が異なるため、社内では両方の数値をいつでも参照できる状態にしておくのが実務的です。

MRRが増えているのにARRの成長率が鈍化して見えることはありますか。

あります。ARRを単純に「直近月のMRR×12」で算出している場合、一時的な大型契約や季節要因が反映されすぎることがあります。数ヶ月の平均MRRをもとに算出するなど、変動をならした見方を併用すると実態に近づきます。

ARR・MRRの数値目標を立てる際、何から着手すればよいですか。

まずは現状のMRRとその内訳(New・Expansion・Contraction・Churn)を正確に把握することが出発点です。内訳が分からないまま目標だけを設定しても、New MRRの獲得を強化すべきか、解約対策を優先すべきかの判断ができません。現状把握を先に済ませたうえで、達成したいARRから逆算して月次のNew MRR目標に落とし込む順序が実務的です。

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